現在では画像生成AIの隆盛とともに著作権侵害の是非が問われるケースが出てきました。内閣府でも画像生成AIと著作権の権利関係の整理を先日行いました。
今回は主にクリエイターの皆様向けに著作権および著作権侵害というのがどういう形で行われるのか、基礎の基礎として説明いたします。ぜひご理解の一助になれば幸いです。
1.著作物の定義
著作物とは、個人の創作性により生み出され、思想や感情を独自の形で表現した作品のことを指します。その範囲は広く、文学、音楽、絵画、彫刻、建築、映像、コンピュータプログラムなど、形式や表現方法によらず、人間の創作活動から生まれるあらゆる成果物を含みます。これら全ての著作物は、著作権法により著作者の権利が保護される対象となります。
2.著作権の内容
(1)著作権(支分権)
著作権とは、著作権法に基づく著作者が独占的に行使できる一連の権利を指します。これらは支分権と呼ばれ、著作権法21条から28条までで明確に規定されています。支分権には、複製権(21条)、公演権、上映権、公衆送信権(23条)、頒布権(26条)、譲渡権、展示権、口述権(24条)、翻訳権、翻案権、編曲権(27条)、二次的著作物の創作権(28条)などが含まれています。
(2)著作者人格権
著作者人格権とは、著作権法第18条から第20条までで規定される、著作者の名誉や評価に関連する権利のことです。具体的には、著作物の公表権(18条)、著作物に対する作者名の表示権(19条)、及び著作物の同一性保持権(20条)がこれに該当します。
3.著作権侵害の要件
(1)類似性
著作権侵害を判断する要素として、「類似性」が重要な役割を果たします。これは、被侵害の著作物と侵害行為を行った作品との間に明確な類似点が存在することを示します。ただし、単純な類似性だけでは不十分で、特有な表現方法や構造、つまり創作的要素が類似していることが求められます。
(2)依拠性
また、著作権侵害を認定するためには、「依拠性」の存在も確認する必要があります。依拠性とは、侵害行為を行った作品が元の著作物に依存して生じたことを指す概念です。元の著作物を知っており、その著作物を参考にして侵害行為を行った作品が生じた場合に依拠性が認められます。これは、直接的に参照しただけでなく、間接的に情報を得て作品を生み出した場合も含まれます。
(3)著作権に該当する行為をすること
さらに、著作権侵害の要件として、「著作権に該当する行為をすること」も必要となります。これは、著作権者が専有的に行使できる権利(例えば、複製権や公衆送信権など)を無許可で行った場合を指します。無許可で行った行為が著作権者の専有権を侵害するものであれば、それは著作権侵害となります。
4.著作権侵害の例
(1)ブログやSNSの剽窃
著作権侵害の一例として、他人のブログ記事やツイートを無断で複製し、自身のブログやSNSに投稿する行為があります。これらは著作物としての性質を有し、著作権法により保護されています。このような行為は、著作権者の権利を侵害し、著作権法に違反します。
(2)イラストや写真の複製・翻案
同様に、イラストや写真も著作物として著作権法により保護されています。他人の作品を無許可で複製したり、元の作品に少し手を加えて新たな作品として発表したりする行為は、著作権侵害となります。翻案行為も、原作品を基にした場合、大きな改変があっても原著作権者の許可が必要となります。
(3)店舗でのCDや動画による演奏
そして、店舗などでの音楽の演奏も、著作権の問題となる場合があります。例えば、CDや動画を公に再生することは、著作権者の演奏権を侵害する可能性があります。演奏権とは、著作権者がその作品の演奏をする権利を指します。したがって、店舗で音楽を流す場合、著作権者から許可を得るか、または適切な著作権使用料を支払う必要があります。
5.権利処理の必要性
著作権は、私たちが日々利用する音楽、映画、写真、文章など、多くの創作物の保護を実現しています。これらの創作活動の成果を保護し、その創作者がその成果の利用による報酬を保証するための法的権利が著作権です。しかし、この著作権を適切に管理し、その利益を最大限に引き出すためには、専門的な知識と経験が必要となる場面があります。その一方で、著作権の取扱いは複雑で、誤った手続きや認識により、無許可で著作物を利用してしまったり、自身が著作権を侵害されるリスクも存在します。
これらの問題を避けるため、正確かつ適切な著作権の処理が不可欠です。具体的には、自身の著作物の登録、著作権侵害の監視と対応、他者との著作権使用許諾の交渉と契約などが含まれます。著作権は創作活動の成果を保護するための法的な手段であるため、これらの処理は創作者の権利を保護し、利益を確保する上で不可欠となります。
このような著作権の処理は専門的な知識と経験が求められ、一般の創作者が自身で行うには難しい面があります。そのため、著作権に関する専門家である弁護士や特許事務所のサポートを得ることが推奨されます。弁護士は著作権法を専門的に理解し、具体的な著作権の処理や問題の解決に役立つアドバイスを提供できます。著作権に関する問題は専門的な知識と経験を必要とするため、適切なサポートを得ることで創作者は自身の権利を保護し、その創作活動を持続することが可能となります。
6.例外的に適法とされる例
(1)私的利用(著作権法第30条)
私的利用とは、一般的には個人やその家族、または親しい人間関係における利用を指します。これは、大規模な商業活動や広範囲な公衆への公開とは異なり、特定の小さな範囲内での利用に限定されることから、著作権法の規定により特例として認められています。しかし、ここで注意すべきは、私的利用が許されているとはいえ、無制限であるわけではないという点です。大規模な公衆への複製や公衆送信などは許されておらず、これらの行為は著作権侵害となります。
(2)引用(著作権法第32条)
引用とは、他人の著作物の一部を自己の著作物の中で利用する行為を指します。教育、研究、報道、評論など、社会的に重要な役割を果たす情報の伝達に必要な行為として、著作権法には引用の例外規定が設けられています。しかし、この引用も無制限に許されているわけではありません。それは、引用が原則として正当な慣行に合致するものであること、引用が報道、批評、研究などの引用の目的上正当な範囲内にとどまること、そして、引用部分が主体であり、被引用分が従となる関係(主従関係)を保つこと、などが求められます。
(3)営利を目的としない上演(著作権法第38条)
営利を目的とせず、対価を受けない上演、上映、口述も、著作権法において例外的に許される行為の一つです。これは、文化の普及や教育の一環として行われることが多く、また社会全体の文化的成熟や教育の向上に寄与することから許される行為とされています。しかしこれらの行為も無制限に許されているわけではなく、営利を目的とする場合や対価を受ける場合には、通常の著作権の規定が適用されます。
7.著作権判断の成否の困難性
著作権の判断は、一見明確な基準があるかのように思われるかもしれませんが、実際には具体的な事例により大きく変わる、また多くの場合、明確な基準がないため難易度が高いというのが現実です。そのため、法的な視点から見た著作権の問題は、専門的な知識と経験を必要とします。それぞれの事例ごとに異なる判断が必要となり、類似性や依拠性、公正な利用などの判断基準もまた、各々の事例により変わる可能性があります。また、法の解釈や適用、さらには技術的な変化によっても著作権の判断は変わるため、専門家でさえ判断に苦慮するケースがあります。
8.著作権について不明なことがあったら弁護士に相談すべきこと
著作権に関する問題は専門的な知識と経験を必要とします。そのため、不明な点がある場合や著作権侵害の疑いがある場合は、専門家である弁護士に相談することが最善の手段です。弁護士は著作権法を専門的に理解しており、具体的な事例に対する適切なアドバイスを提供できます。また、著作権侵害の訴訟や和解交渉の代理人としても活動します。そのため、著作権に関する問題が生じた場合は、すぐに弁護士に連絡を取ることが推奨されます。これにより、適切なアドバイスや法的なサポートを得ることで、自身の創作活動を守り、また可能な限りの利益を確保することが可能となります。
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