【法人向け】製作委員会方式のメリット・デメリット、及びその生かし方

1.総論

昨今より漫画や映画においては製作委員会方式(例:https://gochiusa.com/bloom/story/12.html)という制度が採用されています。制作委員会方式は、日本のアニメや映画産業で主に使われています。この方式は1990年代初頭に、ビデオソフトの売り上げが映画やテレビ放映に次いで重要な収益源となった時期に、リスク分散と製作費調達のために導入されました。制作会社だけではなく、出資者(スポンサー)、広告代理店、放送局、音楽会社、出版社など、作品に関連する様々な業種の企業が委員会に参加し、出資と引き換えに作品の収益を共有します。製作委員会方式は、コンテンツの成功に多くの企業が関与することで、製作費の負担を分散し、リスクを軽減する効果があります。

2.製作委員会方式を採用することによるコンテンツの扱い・権利処理上のメリット

製作委員会方式を採用することで、関連企業間での権利処理が簡素化される利点があります。制作委員会は作品の著作権を保有し、その運用や管理を一手に引き受けます。それにより、複数の企業が関与する場合でも、各社が個別に権利処理を行う必要がなくなります。

また、この方式では、各社が出資金額に応じて作品の利益を分配することが可能です。そのため、製作会社だけでなく、出資者も直接的な利益を得られるのです。さらに、作品の著作権を共有することで、関連商品の開発や海外への販売など、さまざまなマネタイズの道が広がります。

加えて、作品のプロモーションも一元化できます。製作委員会方式では、出資者が共同で作品の宣伝やマーケティングを行うことができ、より大規模なプロモーション活動が可能になります。

3.製作委員会方式を採用することと出資を募ることの便宜との関係性

製作委員会方式では、複数の企業が出資して製作費を捻出するため、一社が全額を負担するよりもリスクが分散されます。したがって、これにより出資を募る際の便宜が生じます。特に大規模なプロジェクトでは、一社単独では製作費を捻出するのが困難な場合が多いですが、製作委員会方式では出資者間で製作費を分担し、リスクを軽減することが可能です。

さらに、製作委員会方式では、出資者全員が作品の収益を共有するため、出資を引き出しやすい環境が形成されます。出資者は投資リターンを見込んで参加するため、リターンの見込みが高い作品ほど出資を集めやすいです。

また、製作委員会方式はプロジェクト全体を通してのコラボレーションを促し、多様な意見や視点を取り入れることが可能になります。これにより、より広範で多角的な視点からプロジェクトを進行させることができ、出資者にとっても魅力的な投資先となります。

4、制作委員会方式のデメリット

4-1.法務面のデメリット

製作委員会方式は複数の企業が関与するため、法務面での課題が存在します。まず、製作委員会の組成や運営について詳細な契約が必要となり、その作成や管理には専門的な知識と時間が必要です。また、参加企業間の意見が対立した場合の解決策を事前に定めておく必要があります。

さらに、作品の著作権は製作委員会が保有するため、個々の企業が作品を自由に活用することは難しく、その利用には委員会の許可が必要となります。これにより、企業間での調整が必要となり、複雑さが増す可能性があります。

4-2.営業・マネタイズ面のデメリット

製作委員会方式では、作品の利益が出資金額に応じて分配されるため、出資額が少ない企業は収益を大きく見込むことが難しいです。また、全体の収益が期待以下だった場合、投資リスクは分散されますが、それでも損失を被る可能性があります。

また、複数の企業が関与することで、作品の方向性や品質について意見が分かれ、作品作りの進行が遅れることもあります。さらに、製作委員会が著作権を保有するため、個々の企業が自由に作品を活用することは制限され、新たなビジネスチャンスを逃す可能性もあります。

5.では製作委員会方式に変わるアニメ・映画製作システムを構築する方法としてどのようなものが考えられるか

製作委員会方式の代替として考えられるのは、一社が全額出資する方式や、クラウドファンディングなどの新しい資金調達方法を活用する方法です。一社が全額出資する方式では、リスクは高まりますが、製作の自由度が増し、製作過程の複雑さが軽減されます。クラウドファンディングでは、ファンや視聴者から資金を集めることで、新たな収益源を開拓することが可能です。さらに、ブロックチェーン技術を用いた資金調達や、作品の著作権などをトークン化するなどの新たな試みも行われています。

6.海外からの投資を受けるために製作委員会方式の仕組みを変える部分があるとしたらどの部分か

製作委員会方式を海外の投資家に理解してもらうためには、仕組みの透明性とシンプルさが重要となります。海外投資家はしばしば複雑な契約や権利関係を避ける傾向があるため、権利関係の明確化や契約手続きの簡素化が求められます。また、製作委員会方式は日本独特のシステムであるため、その特性や利点を海外の投資家に理解してもらうための説明が必要となります。さらに、海外投資家にとって魅力的なリターンを提供する仕組みを考えることも重要です。具体的には、海外の放映権や商品化権を含むような収益分配構造の再設計などが考えられます。

7.製作委員会方式の問題点を踏まえた前田拓郎法律事務所の対応策・サポート内容

前田拓郎法律事務所として、知財コンテンツの保護やマネタイズのためのスキーム提案に協力する際に理想的なサポートは次のようになるでしょう。

  1. 著作権や商標権などの知財に関するアドバイス:コンテンツを保護し、その価値を最大化するためには、まず適切な知財権の取得と管理が必要です。事務所としては、これらの権利に関する詳細なアドバイスを提供し、適切な取得・管理方法を案内します。
  2. 契約書の作成・レビュー:製作委員会方式では、様々なステークホルダーとの間で多数の契約が必要となります。これらの契約書の作成やレビューを行い、クライアントの権利を確保しながら、法的リスクを最小限に抑えます。
  3. マネタイズスキームの提案コンテンツの価値を活かすための新たなマネタイズのアイデアを提案します。これには、ライセンシング、商品化、海外展開などの方法が考えられます。
  4. 紛争解決のサポート:万が一、権利侵害や契約違反などの問題が発生した場合、紛争解決のためのサポートを提供します。これには、交渉の代行や訴訟の手続きなどが含まれます。
  5. 製作委員会方式の改善提案:現行の製作委員会方式には一定の課題が存在します。より効率的でリスクを抑えた新たな制作体制の提案を行うことも一つの重要なサポートとなります。
  6. 国際的な取引の支援:海外からの投資を受け入れるためや、作品を海外に展開する際には、異なる法域の知財法に対する理解と対応が必要となります。そのような国際的な取引の支援も重要な役割となります。

これらのサポートを通じて、前田拓郎法律事務所はコンテンツ制作に関わる各企業を全面的に支えることができるでしょう。

製作委員会方式を採用される際にはぜひ監修元として前田拓郎法律事務所を参画させてください。適切なコンテンツ管理と利益配分スキームを実現させます。

⇒ご関心のある方はこちらよりお問い合わせください。