【VTuberプロダクション・個人VTuber向け】VTuber活動への法務や弁護士が必要な理由

1. VTuberの業務に関する法的基礎知識

(1)VTuberの定義と活動範囲

VTuber(バーチャルYouTuber)は、仮想キャラクターを使用して動画配信を行うクリエイターのことを指します。アバターや3Dモデルを用い、リアルタイムで視聴者とコミュニケーションを取ることが一般的です。活動範囲は広く、YouTubeを中心に、TwitchやTikTokなどのプラットフォームでも活動が見られます。VTuberの活動には、エンターテイメント、教育、PR活動など多岐にわたる分野が含まれます。このような多様な活動を行うにあたって、法的な知識や準備が重要となります。

※VTuberの活動を達成させるに必要となる様々な担当者の存在

VTuberの活動は動画内で演者として活動する人のほかに以下の方々の活動が伴っています。

  • アバターや背景の製作者
  • 企画運営を行う担当者
  • 動画の制作を行う担当者
  • 動画を投稿するプラットフォーム(YouTubeなど)
  • コラボ・企画を扱う取引先企業・法人
  • 実況投稿の場合は実況の素材を扱うコンテンツの製作者 etc.

※VTuberの活動に必要な契約の一覧(一例)

  • アバターの制作・利用に関する契約
  • アバターの演者との間における配信やその他のアバターの取扱いに関する契約
  • 投稿動画の制作に関する契約(企画・脚本・撮影など)
  • 動画の放送及びアーカイブ配信に関する契約
  • 投稿プラットフォーム(YouTube・ニコニコ動画など)との間の契約及び規約
  • 実況動画等に関しては実況コンテンツの制作者との間の契約及び利用ガイドライン・規約
  • 配信・配給に関する契約
  • 企業コラボがある場合はコラボ企業との間の動画撮影・企画に関する契約
  • 視聴者とのやり取りやプレゼント企画がある場合は企画に関する規約
  • スパチャその他の投げ銭に関する扱いについての規約 etc.

VTuberに関する主要な法規制

VTuberとして活動する上で、さまざまな法規制を理解し、遵守することが求められます。まず、他者のコンテンツは著作権や商標権などの権利によって守られている場合があるのでこれらの権利を侵害しないように事前に調査し権利侵害がお子なら内容に動画制作および放送をする必要があります。また、VTuberのアバターの肖像権やVTuberの演者その他の関係者のプライバシーの保護も重要であり、特にリアルな人物をモデルにしたキャラクターやファンとのインタラクションがある場合は注意が必要です。さらに、景品表示法や消費者契約法など、一般の個人である配信者向けに商業活動を行う場合に遵守しなければならない法的義務も存在します。これらの法規制を理解し、適切に対応することがVTuberとしての成功の鍵となります。

2. 知的財産権とVTuber

(1)著作権

著作権は、クリエイティブな作品を保護するための法律です。VTuberのアバターを始め投稿動画やイラスト、動画において流れる音楽などはすべて著作権の対象となります。著作権は作品が創作された時点で自動的に発生し、作者には作品を独占的に使用・配布する権利が与えられます。しかし、他者の著作物を無断で使用することは侵害行為となり、法的措置を受ける可能性があります。VTuberは、自身の作品を守るために著作権を理解し、適切な対策を講じる必要があります。

また、VTuberの演者の声や実演やVTuberの動画放送に関して放送事業者が存在する場合、これらの実演や放送に関しては著作権法上の著作隣接権の対象になります。したがって、VTuberの動画の著作者だけではなく、演者や放送事業者の権利にも注意する必要があります。

(2)商標権

商標権は、特定のブランド名やロゴを保護するための法律です。VTuberが自身のキャラクター名やロゴをブランドとして確立する場合、名称やロゴについて商標登録を行うことでそのブランドを法的に保護することができます。これにより、他者が無断で同じ名前やロゴを使用することを防ぐことができます。ブランド保護は、長期的な活動において非常に重要であり、ファンや企業との信頼関係を築くための基盤となります。適切な商標管理と保護策を講じることが、VTuberの成功に繋がります。

カバー株式会社による「ホロライブ」という名称に関する商標登録の例

(3)肖像権・パブリシティ

加えて、VTuberのアバター及び縁者についてはアバターに関する肖像権やパブリシティ権を認める見解が有力です。これらについてもVTuberを運営する会社等において適切にマネジメントをする必要があるほか、第三者による無断使用については差し止めや損害賠償請求などの警告を発して権利として管理する必要もあります。

3. VTuberの契約とマネジメント

(1)VTuberとエージェント会社との契約

VTuberがエージェント会社に所属することで、プロモーションやビジネスチャンスが広がります。しかし、エージェント会社との契約内容は慎重に確認する必要があります。契約には、報酬の分配、活動範囲、知的財産権の帰属、契約期間、解除条件などが含まれます。不利な契約を避け、適切な条件で活動できるよう、法的アドバイスを受けることが重要です。また、契約違反やトラブルが発生した際には、迅速に対応するための法的サポートが必要です。

一方企業所属VTuberとしてではなく、個人でVTuberとして活動する人も現在はそれなりにいらっしゃいます。この場合は企業への営業活動と動画制作、投稿による活動などをすべて一人でしなければならない点で多大な労力がかかる一方、時間と労力があれば比較的自由に企画や動画投稿などができるというメリットがあります。もっとも、VTuberにはアバターや動画に関する様々な権利関係の処理やトラブル対応の場面がありますので、それらの対応に詳しい弁護士その他の専門家を顧問につけておくことが円満なVTuberとしての活動には重要であるといえます。

(2)VTuberと企業のコラボ契約

企業とVTuberのコラボレーションは、両者にとって大きなメリットがあります。企業はVTuberの影響力を活用して商品のプロモーションを行い、VTuberは企業とのコラボで収益を得ることができます。しかし、コラボ契約には多くの法的要素が絡みます。例えば、景品表示法に基づく適切な表記、コラボレーションの範囲や期間、報酬の取り決め、知的財産権の取り扱いなどが含まれます。双方にとって公平で明確な契約を結ぶために、専門的な法務サポートが欠かせません。

(3)視聴者その他の第三者とのトラブルに関する対応

VTuberの企画・放送に関して視聴者は様々な対応や感想を持ちます。他意のないVTuberの演者の発言や動画の投稿のスタイルや切り抜きなどを持ち出してインターネット上で炎上騒ぎになった例には枚挙にいとまがありません。最悪の場合VTuberの引退にまで追い込まれるケースや、視聴者や炎上に便乗する第三者がVTuberの関係者や法人に個人情報の詮索やプライバシー侵害、名誉毀損行為などを行うケースにまで発展することもあります。これらのトラブルを未然に防ぐための体制の構築やトラブルになったときの事後的な危機管理対応、コンプライアンスに関する措置などをVTuberの活動を進めていく中で構築していく必要があります。

4. プライバシーとデータ保護

(1)個人情報の保護

VTuber活動においても、視聴者やファンの個人情報を扱う場面が多々あります。例えば、ファンイベントの参加者リストや、グッズ販売時の顧客情報などです。これらの情報を適切に管理し、漏洩や不正使用を防ぐための対策が必要です。これらの活動を行うにあたっては事業者において個人情報保護法の基本を理解し、プライバシーポリシーを策定・公開することが求められます。また、法改正や新たな規制に対応するための継続的な見直しも重要です。

(2)VTuber活動におけるプライバシー対策

VTuber自身のプライバシー保護も重要な課題です。特に人気が高まると、個人情報が特定されるリスクが増します。匿名性を維持しつつ活動するためには、SNSや配信プラットフォームでの情報管理が不可欠です。また、第三者にプライバシーが侵害された場合の対応策も考えておく必要があります。例えば、プライバシー侵害を防ぐための法的手段や、事前に準備しておくべき対策などです。安全な活動環境を確保するために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

5. SNSとVTuber

(1)SNSでの著作権と利用規約

VTuberはSNSを活用して自身の活動を広め、ファンと交流することが一般的です。しかし、SNSでのコンテンツ配信には著作権や利用規約の遵守やプライバシーや第三者の名誉に配慮することが求められます。例えば、他者の作品を無断で使用した場合、著作権侵害として法的措置を受ける可能性があります。また、各SNSプラットフォームの利用規約も確認し、違反しないように注意する必要があります。これには、投稿内容の制限や広告表示のルールなどが含まれます。適切な利用方法を理解し、法的トラブルを未然に防ぐことが重要です。

(2)誹謗中傷対策と法的対応

SNS上での誹謗中傷は、VTuberにとって深刻な問題となり得ます。悪意のあるコメントや中傷的な発言は、精神的なストレスや活動の妨げとなります。誹謗中傷に対する法的対応として、名誉毀損や侮辱罪などが適用される場合があります。被害を受けた場合は、証拠を収集し、弁護士に相談できる体制を整えることが重要です。また、SNSプラットフォームの通報機能を活用する、法的措置を視野に入れたガイドラインを設けるなどの方法で対策を講じることも有効です。

今般国会ではプロバイダー責任制限法から情報流通プラットフォーム対処法への改正が可決し、誹謗中傷に対する法的対応がより強化・円滑化されることになりました。これらの点を含めて弁護士による法的対応の体制を整えることが重要です。

6. 法的リスクとコンプライアンス

(1)VTuberの法的リスク

VTuberによる活動には様々な法的リスクが伴います。著作権侵害、パブリシティや肖像権の侵害、名誉毀損、個人情報漏洩などが代表的なリスクです。また、配信内容や発言が問題視され、訴訟に発展するケースも考えられます。これらのリスクを回避するためには、法的知識を身につけ、適切な対策を講じることが重要です。また、専門家の助言を受けることで、未然にトラブルを防ぐことが可能です。リスク管理の観点から、活動前にしっかりと準備を行い、常に最新の法規制を確認することが求められます。

(2)コンプライアンス体制の構築

VTuberとしての活動においても、法令を遵守することは不可欠です。これには、契約の適正化、著作権や商標権の管理、個人情報保護などが含まれます。コンプライアンス体制を構築するためには、内部規則の策定や社員教育、定期的な監査が必要です。また、トラブルが発生した際には迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。専門家の助言を受けながら、継続的にコンプライアンス体制を強化することが求められます。

7. 前田拓郎法律事務所のサポート内容

提供サービスの概要

前田拓郎法律事務所は、VTuberやメタバースクリエイターを対象とした多岐にわたる法務サポートを提供しています。著作権や商標権の管理、契約書の作成・レビュー、個人情報保護に関するコンサルティングなどが主なサービス内容です。また、訴訟対応や紛争解決も行い、クライアントの法的リスクを最小限に抑えるための支援をしています。特に、クリエイティブ業界に特化した専門知識を持つ弁護士が、個別のニーズに応じた的確なアドバイスを提供します。

前田拓郎法律事務所は、これまで多くのVTuberやメタバースクリエイターなどの個人や、VTuberの所属プロダクションなどの法人向けに法務サポートを行ってきました。具体的な事例として、著作権侵害に関する訴訟を解決に導いたケースや、複雑な契約条件を調整して双方が満足する合意を得た事例などがあります。これらの経験を活かし、クライアントの活動を法的に支える体制を整えています。もし今後のVTuberによる活動について事業展開やサポート体制を整えようとお考えの個人や企業様はぜひ弊所に一度ご相談ください。

VTuberの活動やマネジメントに関するご相談はこちらからお受けいたします。